夜の日

夜がすごく好きで、特に窓を開けて明かりを落として過ごす夜が好き。
四角い部屋に外の空気を入れて豆電球の明かりで過ごす夜は、ゆったりと流れて時間の感覚が薄くなる。それがとても必要なように感じる時があって、そういう時の夜はいつもより特別になる。
ベッドの上でだらしなく壁にもたれてメガネを外す。いつもの場所にメガネを置いて、目を閉じる。足を投げだして手は適当に置く。春は猫、秋はコオロギ、あとはパトカーかバイクの音くらい。目と脳を休ませて耳と鼻と肌で感じる夜は変化がなく、ミニマルな音楽と触れ合っているように心地よくて、テレビゲームのポーズ画面のような落ち着きがある。僕が寝るまではこのまま夜がずっと続きそうな、そういう雰囲気がとても好き。
たまにスマホの画面を開いてそのままベッドに放り出す。
なんとなく堪能したらそのまま右に倒れる。倒れた先には枕があって、そこで僕の夜は終わり。
朝になると夜のことが嘘のように時間がせかせかと動き出す。その感じがなんとなく嫌いだけど、おかげで夜がゆっくりなんだとしたら、まあ良いかなという気がしなくもない。